◆ウオッカ◆マクトゥームチャレンジR3 The reason is not because there was it near.
◆『The reason is not because there was it near.』◆
恋愛においては
遠くの美人より
近くのナントカ、などと言われる。
確かに
恋愛において距離が離れることは
致命傷になることが多い。
でも
その人を選んだ理由は
単に近くにいたからではない。
マクトゥームチャレンジR3(オールウェザー2000メートル)
ドバイ・メイダン競馬場
レッドディザイア 1着
ウオッカ 8着
オウケンブルースリ
「ウ、ウオッカさん!」
ウオッカ
「ごめんね、急に呼び出して」
オウケンブルースリ
「い、いえ、そんなことはいいんです。
それより・・・引退は本当ですか・・?」
ウオッカ
「本当よ。
2歳からずっと走ってきたしね。
もう体が限界だったのかもしれないね・・」
オウケンブルースリ
「そうですか・・」
ウオッカ
「・・・私、お見合いしたのよ」
オウケンブルースリ
「・・・ええ。ニュースで見ました・・・」
ウオッカ
「が、凱旋門賞馬だからね! 汗
玉の輿に乗ったかな 苦笑」
オウケンブルースリ
「シーザスターズ・・・」
ウオッカ
「うん・・・たぶん・・・」
オウケンブルースリ
「すごいですね・・・」
ウオッカ
「すごいのかな・・・」
オウケンブルースリ
「そりゃあそうですよー。
ウオッカさんとシーザスターズの子供なら
“13冠ベビー” って新聞に書いてありました。
超人気の種馬らしいですね・・」
ウオッカ
「・・・・・・・」
オウケンブルースリ
「ウ、ウオッカさんの子供なら
きっとものすごくカワイイんでしょうね! 汗」
ウオッカ
「・・・オウケンくん」
オウケンブルースリ
「・・・はい」
ウオッカ
「オウケンくん、前に、私のこと好きって
言ってくれたよね・・・」
オウケンブルースリ
「か、かなり昔の話ですけどね! 汗
しかも完璧に玉砕したしっ!! 汗」
ウオッカ
「・・・今でも・・・」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「今でも同じように言ってくれる?」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「・・・ねえ・・・オウケンくん・・・」
オウケンブルースリ
「・・・もちろん今でもウオッカさんのことは
大好きです!」
ウオッカ
「ありがと うふ 照」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「・・・もし今でもオウケンくんが、
そうやって言ってくれるのなら
私・・・お見合いを断わって
オウケンくんと一緒に逃げ・・・・」
オウケンブルースリ
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ウオッカ
「イヤ?」
オウケンブルースリ
「そ、そんな!
めっそうもございません! 汗
光栄は光栄なんですけども
問題が山積みっていうか 汗」
ウオッカ
「愛があれば、どんなことも乗り越えられる」
オウケンブルースリ
「そ、そんな簡単に言わないでください! 汗
あなたはスーパースターなんですから!」
ウオッカ
「・・・ふーん。オウケンくんって
女の子に色々、軽いこと言ってるって聞いたけど
案外、臆病なのね」
オウケンブルースリ
「い、いやいや! 汗
ウオッカさん相手では、誰だってそうなりますって! 汗」
ウオッカ
「・・・・・・・
じゃあわかった。
オウケンくんはどう考えてるの?」
オウケンブルースリ
「ボクは・・・」
ウオッカ
「・・・・・・・」
オウケンブルースリ
「ボクは、ウオッカさんとは行けません・・・」
ウオッカ
「・・・・・・・」
オウケンブルースリ
「き、気持ちが冷めたとかじゃなく
ボクには、行けないワケができてしまったから・・・」
ウオッカ
「・・・ふふっ
そう言うと思ったわ」
オウケンブルースリ
「え・・・」
ウオッカ
「あの日、私がオウケンくんをフッた日・・・
オウケンくんは泣きながら走って行った。
その後を、レッドちゃんが追いかけていった。」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「その光景を見ていてね、
ああ、あの二人はきっといい関係を築くだろうなって思った。」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「今日は、私のその仮説を
確信に変えたくて、あなたを呼び出したの」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・」
ウオッカ
「ウオッカという競走馬の辞書に、
心残りという言葉はない。
私は曖昧なままにはしない」
オウケンブルースリ
「・・・・・涙」
ウオッカ
「これからは海外で生活するけれど
オウケンくんが今日来てくれたおかげで
スッキリと旅立てるよ」
オウケンブルースリ
「ウ、ウオッカさん・・・ 涙」
ウオッカ
「ありがとね。オウケンくん・・・ 涙」
オウケンブルースリ
「ど、どうしてあの日、タイミングが合わなかったんだろう・・・ 涙」
ウオッカ
「ごめん・・・あたしのせいだね・・・」
オウケンブルースリ
「ほんのわずかなズレでしかないのに・・・ 涙」
ウオッカ
「きっと、ズレてなんかいない。
これが本道なんだよ。私たちの。」
オウケンブルースリ
「・・・ううっ・・・ 涙」
ウオッカ
「・・・泣かないで・・・オウケンくん・・・」
オウケンブルースリ
「ウオッカさんは、いつも遠い存在で・・・
レッドは幼なじみで・・・
男と女は、距離で決まるのですか・・? 涙」
ウオッカ
「・・・・オウケンくん。
あなたがレッドちゃんを選んだのは
単にそばにいたからじゃないでしょう?
私より、レッドちゃんが魅力的だったからでしょう?
そこを見まがわないで。
あなたの目は、ふしあなではない」
オウケンブルースリ
「・・・・・・・涙」
ウオッカ
「・・・・じゃあ、もう行くね・・・」
オウケンブルースリ
「ウ、ウオッカさん! 涙」
ウオッカ
「・・・・去年のジャパンカップ。
唯一オウケンくんと並んでゴールしたレース。
後ろから、レッドちゃんが迫ってきたレース。
あのレースが一番楽しかった。
でも、あのレースでは私が先着したけど
今は、もうあなた達には抜かれたね・・・。
悔いは、何一つない。
ただ楽しかった。
ありがとう、オウケンくん。
あなたのおかげよ・・・。」
オウケンブルースリ
「ウオッカさん・・・ 涙」
ウオッカ
「・・・・さよなら・・・・
今まで、本当にありがとう・・・・」
完
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