阪神JF2015~ キャンディバローズ『つらすぎる逆境を乗り越えた奇跡の牝馬』
◆阪神ジュベナイルフィリーズ2015
【キャンディバローズ】
○Candy Barows
○牝2
○父ディープインパクト
○母アフレタータ
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◆つらすぎる逆境を乗り越えた奇跡の牝馬
≪2013年4月。馬運車にて≫
キャンディバローズ
「ママー♪バブバブー♪」
アフレタータ
「ふふっ。キャンディ、あなたは体が小さくて華奢だけど、お姉さんのファインチョイスのように、重賞でも活躍できる気がするわ。とても強い目をしている 微笑」
キャンディバローズ
「だぁだぁー笑 車おもしろいー。キャッ♪キャッ♪」
アフレタータ
「ううん。違うわね。活躍できてもできなくても、あなたはママにとって、命より大切な存在よ 微笑」
キャンディバローズ
「ママー♪だっこー♪」
アフレタータ
「ふふっ。おいで。キャンディ 微笑」
キャンディバローズ
「キャッ♪キャッ♪」
キキーー!! 車
アフレタータ
「な、なにっ?! 汗」
キャンディバローズ
「エーン!泣 ママー! 泣」
アフレタータ
「・・・大丈夫。キャンディ、ママにつかまって。絶対に、手を離しちゃだめよ!」
キャンディバローズ
「ママー! 泣」
キキキー!! 車
アフレタータ
「キャンディ! 抱」
キャンディバローズ
「ママー!! 泣」
ガッシャーン!!
≪2年数カ月後。焼き鳥シゲにて≫
オウケンブルースリ
「ふむ。今週は、2歳女王決定戦、阪神ジュベナイルフィリーズか。キャリアの浅い牝馬の対決で、難解だよねー」
焼き鳥屋 店主シゲ
「そうですねえ。もつ煮込みおまち」
オウケンブルースリ
「注目は、アルテミスステークスで、逃げて脅威の粘りを見せた、メジャーエンブレムか」
焼き鳥屋 店主シゲ
「アルテミスステークスは、前潰れのレースでしたからねえ」
オウケンブルースリ
「あとは、重賞ウイナーのブランボヌール。ファンタジーステークスは、休み明けで+10キロ。3着とは言え、タイム差なし」
焼き鳥屋 店主シゲ
「そうですねえ」
オウケンブルースリ
「まぁこの2頭が中心かなー。・・・あれ。そういえば、ファンタジーステークスでブランボヌールに勝ったのは、誰だっけ。なんか小柄で冴えない馬だったよな。えーと・・・」
ガラガラッ
焼き鳥屋 店主シゲ
「へい!らっしゃい!」
キャンディバローズ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「ん?なんだなんだ?ずいぶん小さな女の子が、焼鳥屋に来るんだな」
キャンディバローズ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「おい。おまえ一人か?お母さんは?」
キャンディバローズ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「ん?」
キャンディバローズ
「・・・ママ・・いない・・」
オウケンブルースリ
「ふむ。どうすんの?シゲさん」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「おい。なんでこの店に来た?腹減ってんのか?」
キャンディバローズ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「・・・・汗」
キャンディバローズ
「・・・ママが書いたメモに、『大きくなったキャンディへ。食事はよく噛んで食べること。知らない人についていかないこと。レース前、悩んだら、焼き鳥シゲに行くこと』って、書いてあった・・」
オウケンブルースリ
「レース前?おまえ、競走馬か?」
キャンディバローズ
「・・・うん。勝負服・・これ・・」
オウケンブルースリ
「・・・これは、バローズの勝負服・・。てことは、お前が・・」
キャンディバローズ
「キャンディバローズですっ。父ディープインパクト、母アフレタータですっ」
オウケンブルースリ
「アフレタータ?懐かしいな。お母さんは元気か?」
キャンディバローズ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「ん?」
キャンディバローズ
「・・ママは・・」
オウケンブルースリ
「うん」
キャンディバローズ
「・・ママは2年前・・馬運車・・。ママと私は、一緒に馬運車に乗ってて・・ 涙」
オウケンブルースリ
「ちょ、ちょっと話が見えないんだけど 汗」
キャンディバローズ
「・・ママ・・ 涙」
オウケンブルースリ
「・・・・汗」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・落ち着いて話しなせえ。キャンディさん」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
≪15分後≫
オウケンブルースリ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「・・・なんてこった。」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
オウケンブルースリ
「お前と母ちゃんは、一緒に馬運車に乗ってて事故にあい、お前だけが生き残ったのか・・」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・・ママ・・。あの日・・私を抱きしめててくれた・・だから私・・生きていられた・・ 涙」
オウケンブルースリ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・・私を守って・・ママは・・ママは・・ 涙」
抱
オウケンブルースリ
「・・・もういい。 抱」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
オウケンブルースリ
「・・・もう思い出さなくていい。辛かったな」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
オウケンブルースリ
「・・・生まれたばかりの仔馬に、そんな逆境を・・。神様はイジワルだ 涙」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
オウケンブルースリ
「ねえ、シゲさん。こんな不公平があっていいのか? 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・キャンディさんな」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・逆境は才能を凌駕する」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・人生は不公平だ。生まれてから死ぬまで、大きな逆境もなく平穏な人生を過ごす人もいれば、キャンディさんのように、生まれてすぐに逆境の波に飲まれる人もいる」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「誰しも、平和な人生を過ごしたい。逆境など、ないほうがいい」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「だが、その半面、逆境は強靭な精神力を作り、人の痛みが分かる心を作り、人を惹きつける魅力的な人格を育てる」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「理不尽な逆境を乗り越えてきた者は、平穏で穏やかな人生を送ってきた者には、決して手にすることができない武器を手にする」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「だから、キャンディさんな」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「あんたが越えてきた逆境は、競走馬としてだけでなく、引退してからの人生でも武器となり、生涯、あんたを守ってくれるに違いねえ」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「お母さんはいなくなっちまったが、お母さんが残してくれたものは、一生、あんたを守り続けてくれるだろうぜ」
キャンディバローズ
「・・・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「な。」
キャンディバローズ
「・・・はい・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・すまねえ。こんな事しか言ってやれなくて・・」
キャンディバローズ
「・・・いえ・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・・心に響きました・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・ママがいなくなって、ひとりぼっちになっちゃったと思ってたけど、ママ、今も私を守ってくれてるんですね・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「ああ。そう思うぜ」
キャンディバローズ
「ありがとう、シゲさん。オウケンさん。ママが、ここに来なさいって書いてた意味が、少し分かった気がします・・ 涙」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
オウケンブルースリ
「・・・・ 涙」
キャンディバローズ
「・・私は体も小さいし、ファンタジーステークスは展開にも恵まれたから、阪神ジュベナイルは正直、厳しいと思います」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・でも・・」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「・・頑張りたい」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「ママが守ってくれたこの命を・・輝かせたい」
焼き鳥屋 店主シゲ
「・・・・」
キャンディバローズ
「たとえ勝っても負けても。」
焼き鳥屋 店主シゲ
「おう。応援馬券、買っとくぜ」
オウケンブルースリ
「おうよ!あり金かき集めて、応援馬券、買っとくからな! 涙」
キャンディバローズ
「うん 微笑」
焼き鳥屋 店主シゲ
「がんばんなせえ」
オウケンブルースリ
「ガンバレ!キャンディちゃん! 涙」
キャンディバローズ
「うん。ありがとう。行ってきます。シゲさん、オウケンさん。・・・ママ。」
~ 母アフレタータへ、哀悼の意を込めて ~